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「そうかな。俺は飯島さんの仕事、早くて丁寧だと思ってるよ。でも、毎日のようにこんな残業して、休日もたまに仕事してるよね。プライベートは大丈夫なの? これじゃ彼氏とデートの時間も取れないでしょ」
寡黙だと思っていた林田さんは意外とフランクに話す人のようだった。だけど私はそういうやり取りはどうしても苦手なので、資料に目を落として手を動かしながらながら返事をする。
「特に趣味も無いですし、彼氏とか必要としていないので平気です。お気遣いありがとうございます」
少し突っ込んだ話になってきたので、これ以上雑談するつもりはないと言わんばかりの返しを、林田さんは理解してくれたようだった。
「ごめんごめん。ハラスメントに引っかかる言い方だったね。じゃあさ、俺もう少し仕事があって残ってるから、その資料作り終わったら教えてもらえるかな。急いで作る必要はないよ、こっちもまだやることは残ってるから。今日中に終わるんなら軽く目を通しておきたいんだよね」
そういうことなら……と私は目線を林田さんに向けた。
「承知しました。終わり次第ご連絡します」
それだけ言うと林田さんは自席へ戻っていった。私は気合を入れ直してパソコンに向き直る。林田さんが何時まで残るつもりなのかは分からないけど、待たせるようなことはさせられない。
それから1時間後、私は出来上がった資料をフォルダにコピーして林田さんの元に向かった。林田さんはまだパソコンに向かって何やら資料を作っている。
「林田さん、先程の資料作って所定のフォルダに置きました。ご確認ください」
それだけ言って立ち去ろうとすると、林田さんは手を止めてこっちを向いた。
「ありがとう、思ったより早かったね。もう今日は業務終了ということでいいかな?」
私が頷くと、林田さんは笑顔になった。
「じゃあさ、これから軽くご飯でも行かない? 少し話したいこともあるんだよね」
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