01. 驚きの提案

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 予想していない言葉に戸惑ってしまう。それに、さっき言っていたことと話が違う。 「え? いや、林田さんこれから資料確認するんじゃないんですか?」 「明日の朝早く来て確認するよ。お腹空いちゃって集中切れそうなんだ。俺が奢るから行かない? 話したいこともあるんだ」  林田さんからそんな事を言われるとは思わなかった。でも私はこういう誘いが何よりも苦手だ。胸の奥で寒気にも似た嫌な感じがじわじわと広がっている。 「い、いえ。私はそんなにお腹すいてないので大丈夫です」  そう言って後ろを向いて戻ろうとした時、林田さんに右腕を摑まれて引き留められた。力が強いわけじゃなかったけど掴まれたこと自体に恐怖を感じてしまい、手を引こうと力を入れようとした瞬間だった。その最悪のタイミングでぐぅ、とお腹が鳴った。それは林田さんにもしっかり届いていたようで、またククッと笑い声が聞こえる。 「なんか紛らわしい言い方だったかな。口説こうとしてるとかじゃなくて、飯島さんの今の状況も踏まえて、提案したいことがあるんだ。とりあえず話だけでも聞いてみない?」  私の今の状況ってどういう事? 『提案』っていうのが何なのか全く想像もつかないけれど、ちょっとだけ興味が出てきた。 「それは仕事の話ですか? それともプライベートな話ですか?」 「中間かな。プライベートにかかわるところで、ちょっとした仕事をしてみないかっていう提案。だけど副業とかそういうことじゃないんだ。これ以上はここで説明しても長くなるから、ご飯でも食べながらどこかでゆっくり話したいんだよね」
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