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いまいち要領が得られないだけに、話を聞いてみたいという思いも無くはない。それに実際お腹は空いている。今日はバタバタしすぎてお昼ご飯を食べそびれのだ。
「……分かりました。その代わり割り勘にしてください。何もない人に奢られるのは嫌なんです」
「ふふっ……オッケ。本当に真面目だね。じゃあ、あと10分くらいしたら出ようか。出る時に声かけるから」
そうして20分後、私と林田さんは仕事場からそう遠くないところにある居酒屋にいた。
「まずは乾杯するか」
林田さんはピールを持ち上げたけど、私はビールジョッキに手をかけつつも持ち上げない状態で、小さく呟いた。
「すみません、先に少しだけ食べてもいいですか? 今日お昼食べそこねたので胃が空っぽで。いきなりアルコール入れるとあっという間に酔いがまわりそうなので」
お腹が空いてないとまで言ったのにこれじゃ流石に恥ずかしい……顔が見れず俯いていると、林田さんは優しく微笑んでくれた。
「そういうことは早く言えよ。もっとガッツリしたもの頼めばよかったな。まだ枝豆とお通ししか無いけどとりあえず食べて」
そう言って、私のテーブルの上に置かれたままのビールグラスに軽く自分のグラスをあててから一口飲んだ。
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