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海花さんたちを見送った後、私は遼太さんに断りを入れて店を出た。ホテルのスタッフルームへ向かうと、冴島さんを見つけて駆け寄った。
「お疲れ様です。先日はありがとうございました」
「あら沙耶ちゃん、お疲れさま。わざわざありがとね。新婦さんもすごく喜んでくれて、いい式だったのよ。私もお手伝い出来てよかったわ」
私は先程トラブルの元となった人が来たこと、問題が解決したことを簡単に伝えてから、目的の話を切り出すことにした。
「今回の件報告書にしますか? するようであれば私の名前は伏せてほしいんです。もちろん私が書くべきところがあれば書かせていただきますけど」
ホテルで何かトラブルがあった時は報告書にまとめて本社に提出するんだけど、最初にチェックするのは管理部だ。そこに私の名前があると、また暇だからトラブルに首を突っ込んだんだろうとか、ホテルの従業員巻き込むなとかネチネチ言われそうだから避けておきたかったのだ。
「そうね。追加の費用とか発生したから簡単に出すつもり。あ、もしかして本社の人が現場で勝手に口出ししたりとかまずいのかしら? 大丈夫、こっちで動いたことにしておくから。他の人はともかく、沙耶ちゃんのお願いなら私たちいつでも大歓迎だから、困ったことがあったらいつでも言って」
他の人はともかく、そんな前置きをつけられるくらい本社の人はここでもあまりいいイメージがないのだろうか。でもこうして温かく声をかけてくれるのは嬉しい。報告書については、理由は少し違うけどとにかく私の名前が管理部に届かなければ何でもいい。私は再度念押ししてスタッフルームを後にした。
これで何の問題もない、そう思っていたのに。私が本社に呼び出されたのは翌週のことだった。
「飯島、この報告書の件だけどお前が関わったんだって?」
井上課長に呼び出されて見せられたのは冴島さんが提出した報告書だった。まさか冴島さんが私の名前出したのだろうか。あんなにお願いしたのに。
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