07. トラブルは再び

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「沙耶香さん、休憩終わりで大丈夫? ドリンク作るの手伝ってほしいんだけど」 「あ、はい。今すぐ行きます。ごめん、朔斗くん。慰めてくれてありがとう」  私は急いで立ち上がった。危うく契約結婚だと打ち明けてしまうところだった。誤魔化すように仕事に戻ると、朔斗くんも聞こえていなかったのか、特に聞き返されることもなかった。  おそらく打ち合わせをしているんだろう、アイスコーヒーを7個会議室へ、というオーダーが来ていた。朔斗くんも手伝ってコーヒーを準備して遼太さんが運んでいった。 「沙耶香さん、まだ少し目が赤いみたいだからこのまま飲み物作り担当お願いします。レジとフロアは俺がやるんで」  朔斗くんの優しさか心に染みた。休憩中とはいえ、泣いて仕事に支障をきたすなんて恥ずかしい。私は気合を入れて飲み物を作りつつ、合間に裏で目を冷やして赤みをひかせていた。  2時間程が経過して、完全に目の赤みもおさまったのでレジに立ち始めたときだった。「ホットコーヒー2つ」の声が耳に飛び込んできた。どこかで聞いた不快な声。まさか…… 「あら、誰かと思えば飯島さんじゃない。まだこんなところにいたのね」  目の前に立っていたのは西岡さんだった。思わず私の顔が引きつる。私はスマートフォンを手にしていた創祐くんに目配せすると、創祐くんはスマートフォンをレジ横のテーブルに置いてドリンクを作りに行った。 「あんな役立たずだったのに、まだ続けてたのね。ここでの仕事がつまらなくて、他人に余計なお節介を焼いて自分の手柄たてようとして、周りの人たち巻き込んだんでしょ。一緒にやってる方たちもさぞ迷惑なんじゃない?」  結局ここでネチネチ言われるのか……ウンザリしながらいつも通りの接客をする。 「アイスコーヒー、ではなくホットコーヒー2つ、でよろしかったでしょうか」 「ええ、ホットコーヒーって言ったでしょ。何を聞いていたんだか。今日はまともな接客してほしいものだわ」  私は極力目を合わせないようにして、レジ打ちをする。 「ホットコーヒー2点で560円になります」
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