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その後はゆっくりとコーヒーを飲んで、だいぶ体調も良くなったのでそのまま帰宅すると、いつもより早い時間のはずなのに部屋の電気が点いていた。玄関のドアを開けると、中から「おかえり」の言葉が聞こえてきた。
リビングに入ると、淳さんが1人で晩酌をしている。
「ただいま。今日は早いんだね」
ちゃんと会話をするのでさえ久しぶりな気がして少し緊張してしまう。
「最近ずっとすれ違ってるから、ちょっと話がしたいなと思って。飯は?」
「少しだけ食べてきた」
「そっか。じゃあ酒だけでも少し付き合わないか。惣菜もあるから食べれそうなら適当につまめばいいし。とりあえず着替えてきなよ」
そう言うと立ち上がってキッチンに向かった。私が着替えてリビングに戻ると、近所の中華屋でテイクアウトしてきたであろう餃子とレバニラ、それに缶ビールと缶チューハイが置いてあった。
明日も早いので、なるべくアルコール度数の低いチューハイを選んで開けると、淳さんも缶ビールを持ち上げたので乾杯する。
「仕事、どうだ? 今は現場に出されてるんだろ」
「まあ、みんないい人だし、楽しくやってるよ。淳さんはずっと忙しそうだよね。大丈夫?」
今日のトラブルのことは何となく言いたくなくて、簡単な返しにしてしまう。
「まあ、部長ともなれば社内調整とか接待とか色々あるからな。でも作業自体は昔より減ったからキツくはないよ」
そんなことよりもっと話したいことがある。今日のこと、古坂さんのこと。
「あの……」
「あのさ」
重なる声に言葉が詰まる。「淳さんどうぞ」私の言葉に淳さんは姿勢を直すと、こちらに向き直った。
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