07. トラブルは再び

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 写真は喫茶店で私と古坂さんが向き合っているところが写っている。今日西岡さんが撮ったものだった。井上課長は帰る前に、西岡さんが言っていた『業務中にサボって誰か(淳さんの浮気相手と思われる人物)と会っていた』ことについても念のために、と遼太さんに確認してきた。西岡さんが私にサボってたと問い詰めているのが音声に残っているので、社内でこの動画を確認した時に誰かから聞かれるかもしれないから、ということだった。  もちろんそれは遼太さんにしっかりと説明してもらい事なきを得たんだけど、その時に私は井上課長にあの時西岡さんが撮った写真を貰えないかとお願いしていた。今日のことを淳さんに確認するときにうまく逃げられないための証拠として。 『これ、本当に浮気相手なのか? もし困ってるようならいつでも相談にのるから言えよ』  井上課長の気遣う文面とともに写真が送られてきて、先程はちゃんと見れなかったその写真を見て驚いた。単純に浮気相手が会いに来た、それだけじゃないものを感じる。だけどこれは淳さんに確認を取るとして、まずは井上課長に余計な心配をさせないようにしなければ。 『いえ、彼女は私と夫の共通の友人です。最近夫が仕事終わりに会っているのを見かけた人が勘違いしてるみたいで。でも私も承知していることなので心配不要です。ご心配頂きありがとうございました』  こんな弁解したくはないけど、西岡さんに話が回った時点で社内中至るところに話が行く可能性がある。淳さんもそうだけど私もそんな噂話に振り回されたくなくて、たとえ本当だとしても面白おかしく陰であれこれ言われたくなくて、ついつい嘘の内容を返信してから写真をフォルダに保存した。  そうして手に入れた写真を、淳さんは驚きの表情と共に釘付けになって見ている。 「これは……何かの間違いじゃないのか。晴香がこんな事するわけ……」 「とりあえず、事実確認をさせてください。古坂さんとはお付き合いしている、というのは合ってますか? それと、彼女は私たちの事を愛のない結婚、って言ってました。古坂さんに契約結婚のこと話したんですか?」
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