スキャンダル

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「じゃ、私が工藤をホテルまで送ります」 「大神主任…」 「その方が普通に行けるだろ。どこのホテルですか?」 大神が和奏に言った後、マネージャーに訊く。 《助かります。ホテルは、ハイランドホテルです》 「えっ、ハイランドホテルって…」 和奏と大神が顔を見合わせ驚く。 《リツはホテルに入って、部屋に入ったまま出ていません。鈴鹿さんはホテルの裏口から出てもらって、すぐに帰っているんです》 「そうだったんですか…」 大神が納得したように言い、マネージャーが和奏に話す。 《では工藤さん、明日仕事が終わりましたら、ハイランドホテルに来て頂けますか?》 「はい」 《私は部屋の前で待っていますので、ホテルに入ったらそのままエレベーターで10階まで上がって下さい》 「はい」 《あとは、リツとよく話し合って下さい。前回の時に十分、分かって頂けたと思いますので、今後の事は、お二人にお任せしたいと思います》 「はい、ありがとうございます」 《帰りは、タクシーで帰られても大丈夫ですよ》 マネージャーの声が少し明るくなる。 「はい、分かりました」 《では、明日ホテルでお待ちしております》 そこでマネージャーは電話を切った。大神も電話を切り、携帯を鞄にしまう。 「やっぱり捏造だったか……」 「はい…」 「そうだよな。今さら他の女なんて好きになる訳がない。20年以上も想い続けているんだから…」 和奏は黙ってうつむいた。 「あ……」 大神の声に和奏は顔を上げて大神の顔を見ると、何かを思い出したかのように口を開けたまま、ゆっくり顔を歪めていく。 「どうしたんですか?」 「もしかして『月下美人』って、和奏とリツの事?」 「あぁ……はい。私がお土産であげたお揃いのキーホルダーを、律の実家の鍵に勝手につけたんです」 「てか俺、ライブの時……『月下美人』を歌っていた時、リツはずっと和奏を見てたのか?」 「あっ………はい…」 「ごめんっ! ! 俺っ……」 「あの時は私も泣いてしまったので……怒られたけど…大丈夫です…」 「怒られた? やっぱそうだよな……あぁ……はあぁぁっ! !」 大神はまた何か思い出したようで、大きな口を開けて息を吸った。 「今度はなんですか?」 「お、俺……和奏の事……リツの前で名前で呼んだよな…」 「あぁ、それも、怒られました……」 「ごめん! ! ほんと、ごめん! えっ、それで振られたって事は」 「いえ、それはないです。律は私を守るために離れただけだと思います」 「そっか……でも、ごめん。俺でも、嫌だからな……」 「律に会ったら、謝っていた事を言っておきます」 「あぁ…」
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