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夢日記のやり方は簡単だ。
ベッドの隣にノートとペンを置いて寝る。起きたら夢の内容を、覚えている範囲でなるべく具体的にノートに書いていくだけだ。
涼介は翔馬に勧められたその日から、夢日記をはじめた。
一日目はトイレにいるときに、大地震が起こる夢だった。あまりにもリアルで、夢日記に書いたあと、こっそり夢占いで調べると、不安や不満が募っていると書かれてある。
自分の心境をズバリ当てられ、涼介はドキリとした。
それから、二日目は受験に失敗する夢、三日目は高い所から落下する夢と、嫌な夢ばかりが続く。
しかも、なかなか効果はでない。やめようかと思ったものの、せっかく翔馬が勧めてくれたのだからと、一週間は続けることにした。
涼介が自分の変化に気がついたのは、夢日記をはじめてから六日目の夜だ。
英単語の暗記なんて、三十分ももてばいいほどだったのに、いつの間にか一時間以上続けていた。しかも、塾の小テストでは、山が当たって満点を取ることができた。
「いや……さすがにこれはまぐれだろ」
満点の答案用紙を見れば、ついニヤけてしまう。けれど、これ一回こっきりということもある。
涼介は喜びを押さえ、勉強と夢日記を続けた。
その甲斐あってか、勉強への集中力はみるみるアップし、それに比例するように成績も右肩上がりになる。
夏休み最終日に行われた、夏期講習のまとめテストでも高得点をおさめた涼介は、ここでようやく翔馬と香苗に報告した。
「うっそ! すごいじゃん」
香苗が自分のことのように喜ぶ。その横で、翔馬が一瞬、悔しそうに顔を歪め、涼介を睨んだような気がした。しかし、すぐに「よかったな」と嬉しそうに微笑んだ。
「これも二人のおかげだ。本当にありがとう」
涼介は二人に感謝し、三人で必ず合格しようと励まし合った。
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