月夜に運命をみる者達よ

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「フウ君は月光竜様から、あなたの未来は絶対変えられないって教えられたんだよね……それでも、今も頑張ろうって思えるのはどうしてなの……?」  二十歳になるまで生きていたら、神罰が発動して、地獄のような責め苦を味わうことになる。そんな事実を知ってしまったら、風深だったら、生きていようと思えないだろう。 「何故って言われてもなぁ。自分がやらかしたわけでもない罪で裁かれるのを怖れて、自分から死ににいかなきゃいけないなんて……そんなの悔しいじゃないか」  二十歳になってしまうギリギリまでは、回避する術を模索して諦めるつもりはない。風深の目には、フウの心の強さも努力する姿も眩しく映った。 「フウ君……私、ね。人を、死なせてしまったことがあるの」  交差点で信号待ちをしていた時だった。風深の正面にいて、うっかり目が合ってしまった。横断歩道の反対側に立つ、サラリーマン風の男性。彼が、歩道に突っ込んでくる車に跳ねられて亡くなる場面を見た。  信号が青になるのを待っていては、その人が跳ねられる時に間に合わない。風深は思わず、赤信号に飛び出してしまって。風深を避けようとした別の車がハンドルを切ったから……別の誰かが事故で、亡くなってしまった。 「だから、悲惨な未来や誰かが死ぬ未来が見えても、それを変えるのが怖くて……こんな目、世の中で何の役にも立たなくて。こんな目を持ったまま、生きているだけでも怖くて……フウ君は生きていたい人なんだから、死んでもいい私が代わりに、その神罰を受けられたらいいのに……」 「……あのさぁ。死んでもいいなんて、軽はずみに言わないでくれよ」 「ご、ごめんなさい……」 「……これで泣くとか、……あ~あ」  叱られるかと思ったけど、フウは言いかけた何かと共に何事か思い出したようで、深く溜息をついた。 「そういえば、俺の兄もおまえと同じで、俺には見えない何かを見ててさ……そのせいで毎日毎日、悲しんで、泣いてばかりだった。子供の頃の俺はそうやって泣かれるのがうっとおしくて、あいつに優しく出来なくて……あの日、あいつは俺には会えないどこかへいなくなっちゃったんだ」 「……後悔、してるの? お兄さんに会えなくなって……」 「……わからない。カザミの言った通り、そうしたおかげであいつは楽になれたんだとしたら、あいつの悲しみをわかろうとしなかった俺にどうこう言う資格ないし……結局、さ。あいつにとってこの世界が、悲しいことがあっても何としても生きていたいとか、帰ってきたい場所なんだって、俺が思わせてやれなかったせいで……だからいなくなったまま、帰ってきてくれないんだよな」
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