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Tokyo 1
東京、銀座にあるGINZA SIX
2015年2月に出来たばかりの銀座のランドマーク。地下6階、地上13階のビルだ。ラグジュアリーブランドの旗艦店を始め、大人向けのラインナップになっており、ブランド店が約240店舗出店している。外観はひさしとのれんのイメージで、施設内にはアーティストとコラボしたアート作品が点在してある。
このビルが金曜日の夕方6時ともあれば賑わいを見せて当然とも言えた。
彼女はそんな中を一際目立つ艶やかなマリンブルーのミモレ丈のワンピースに身を包み、黒の小さなショルダーバッグ、同色のピンヒールで歩いていた。
まぁ、慣れたものだが、歩く人が皆一度は吸い寄せられるように視線を彼女に向けていた。
顔はよく分からない。なんせ場に似合わないサングラスをかけていて、視線が合うことはないからだ。
そんな彼女は、あるブランドショップの前で足を止めると、店内に入店していった。
彼女が入店すると、中から小走りで満面の笑みのお団子頭の中年に差し掛かった女性スタッフが出てきた。すごく背筋が伸びていて姿勢が良かった。
「ご来店ありがとうございます。お客様、本日のご用件は何でしょう?」
スタッフに尋ねられた彼女は、サングラスを外すと、胸元に引っ掛けた。そして、鞄から右手でキーケースを取り出すとスタッフに向けて差し出した。
「これ金具緩くなっちゃって、変えようと思って」
「左様で御座いますか。今、新作をお持ちしますので、どうぞ此方へ」
スタッフはにこやかに彼女を接客すると、奥へと進むよう促した。
彼女は店内をクルッと見回すと、奥へと足を進めた。
買い慣れているのか、特に緊張する素振りもなくスタッフとやり取りをしていた。
どうやらこの店は革製品の小物や鞄を多く取り扱っている店らしかった。
高級ブランド店らしいロゴの入ったガラスショーウィンドウには大きなローマ字や幾何学模様が合わさったロゴが大きく印字されていた。
店内には先程のスタッフとまだ数名いる様子で、照明も暗く、木製の家具や調度品といいシックな雰囲気に仕上げられていた。
彼女は案内された椅子に座ると、目の前の用意された商品を見比べていた。
暫くして、一つを選ぶと接客してくれているスタッフにこれにすると告げた。
数分後、スタッフが支払いはカードですか?と尋ねると彼女は現金でと答えてバッグから財布を取り出した。
一万円札を数枚引き抜いて、数えてから相手に手渡そうとした。
だが、その時、彼女からお札を受け取ろうとして一瞬で手を引っ込めた。
「申し訳ございません!今静電気で思わず手放してしまいました。此方お預かりさせて頂きます」
スタッフの女性は恭しく深々とお辞儀をし、お札を受け取ると、カウンターの奥へと戻って行った。
5分後、彼女は商品の入った紙袋を受け取るとショップから漸く出て来た。
そして、その足でエスカレーターのある方へと向かった。
どうやら待ち合わせをしている様子で目的のフロアに着くと、スマホを取り出して、誰かとメールのやりとりを始めた。
時刻は午後7時を少し回っていた。
レストランフロアには、人が多く集まり出していた。
イタリアン、和食、フランス料理などの店舗が軒を連ねる中、彼女はバーカウンターもあるようなレストランに入っていた。
店内から、ウェイターらしき背の高い細身で一重でシャープな印象のある男性がやって来て、彼女に名前と予約かどうかを確認している。
彼女は聞かれたことを答えると、奥のカウンター席へと案内された。
午後7時15分。
彼女の席の隣に高級そうなスーツに身を包んだ40代かと思われるエリートサラリーマンらしき男性がやってくれた。容貌は美形とまでは言えないが程よく整っていて、目尻にあるシワと、キュッと引き締まった口元に色気が感じられた。
「愛莉、遅れてしまって申し訳ない」
低く落ち着きのある声は、耳元に届くと安心感のある心地よい響きだった。
「いいえ、さっき来たばかりよ」
「今日は随分爽やかに見えるね。新しいワンピース買ったの?毎回毎回色鮮やかな服着るよね」
「ううん。一回着たら飽きるだけ」
彼女はそう答えると、置かれていた水が入ったグラスを手に取り口に運んだ。
二人が会話していると、先ほどのウェイターがやって来て、男の席に水とメニューを手渡しにやって来た。
その際に、本日のコースメニューの説明やオススメ料理なども伝えてくれた。
男はウェイターの説明に丁寧に頷き返すと、彼は接客仕様の微笑を浮かべてご注文がお決まりになりましたらまたお呼び下さいと、席を離れた。
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