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彼女は椅子から立ち上がり、そんな男を見下ろすと告げた。
「あなたの視界には、私も奥さんもきっといない。そんな男に抱かれ続ける程私暇じゃない。はい、これあげる」
彼女はそう言うと、男にある物を渡した。
「なんだこれ」
見た目はキャンディーみたいだった。
可愛らしいビビットカラーの包み紙に包まれたそれは開くとラムネ菓子のようだった。
彼女は屈むと男に告げた。
相手の瞳の奥まで覗きこむようにして、微笑みかけると口角をキュッと結び見たことないくらい笑顔になった。
「これね、ぐっすり眠れるの。たまには、ゆっくり休んだ方がいいよ」
男はそう言われて、少し不思議そうにしながらも彼女に言われるがまま、その物体を口に含んだ。
彼女は男がそれを口に含むのを確認すると、さっさと部屋を出た。
部屋を出ると少し早足でエレベーターホールに向かう。
彼女がボタンを押して、数十秒でエレベーターは来た。
彼女がエレベーターに乗り込むと、マリンブルーのドレスが鮮やかに翻った。
掛けていたショルダーバッグの紐を掛け直しながら、一階のボタンと『閉まる』を押した。
エレベーターの扉は閉まるとゆっくり下降し始めた。
彼女はそこで小さくため息をついた。
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