クネヒト・ループレヒトの裁き

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 それから次々と近所をめぐって、聖夜に図々しく楽しく過ごす悪人どもを成敗したもんさ。きっと俺が不良外人に殺されたと思って、安心してやがったんだろう。インターホンを鳴らして「町内会からのプレゼントです、メリークリスマス!」と、言ったら、どいつも疑わずドアを開けやがった。  (地蔵盆にはお菓子と、日用雑貨、敬老の日には饅頭を配ったりしてるんだ――たった四千円ぽっちの町会費で、そんな予算があるわけねえだろうが、まったくどこまでさもしんだ、こいつら?)  とにもかくにも、次の瞬間、正義が行われた。女、子供も見さかいなく制裁を加えてやったよ。誰一人、見逃さなかったし、手心も与えず《悪い子》に厳格に罰を与えた。  もう、腱鞘炎になるほど義手を振り回した。  気がついたら俺の衣装は緑から臙脂(えんじ)に代わっていたね。返り血もあったけど、出刃包丁やゴルフクラブで抵抗する奴もいたから、こっちも無傷でいられなかった。  で、クネヒト・ループレヒトからサンタになったという訳さ。  色が濁っていたけど、真っ赤な衣装のサンタさんさ。  何人かはこの世から駆除したんだし、もう、思い残すことはなかったね。  残りの交番警官共も殺したがったが、あいにく相手は警棒を持ってるし拳銃も持っている。武装した相手じゃ多勢に無勢で手製の義手だけじゃどうにもならない。  それでマンションの屋上を目指したわけさ。せっかくクネヒト・ループレヒトから人畜無害のサンタになったんだし、最後は空を飛ばないと格好がつかない……。そう思ったのさ。                      了    
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!