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「朝が来たら、また始まってしまうから」
「うん」
「どうか夜のままで、って、毎日思うの」
「うん」
「朝が来なければいいって思うの」
「そうだね。僕も知ってるよ、夜は優しいからなんにも見なくて済む」
「……うん」
「でもただ暗いんじゃ悲しいんだ。僕もあなたも。だから、ほんとは夜明けを待ってる。ここに居たい理由が僕とあなたはきっと同じって、言ったでしょう」
頬を伝う涙の跡がきんと冷えて、耳は感覚を失うほどに冷たい。私や少年の吐く白い息と、夜の終わりを、まだ隠れたままの朝陽が淡く照らしている。
分かっている。まだ来ない朝の暖かさを、私はちゃんと知っている。
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