夜明けの波間に

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「おはよう」  あたりまえのことのように小さく挨拶を返した。少年はこくりと頷くと、陽にてらされた湖面のような、きらきらと光る大きな瞳を船の外へ向ける。  この些細なやり取りは、私がこの古く美しい船に乗っていてもいい証明のように思えた。  どうしてだろう?ほっとしたような、苦しいような、ずっとこうしていたいのに大きな声で叫びたくなるような、ぐちゃぐちゃになった感情が胸の底でさざめいている。  私には何もわからないまま、胸の底で静かに波を立てる何かが目から溢れて、視界の一番下が滲んだ。私の住むはるか下の街はいま、海の底に沈んでいるように見えた。
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