夜明けの波間に

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 旧い船の軋みを聴きながら、いつまでも、美しい空の色を二人で見ていた。紺、赤、紫、オレンジ、その色はオーロラのように揺らめいて燃えて――  ――いつまでも?  はっと気がつく。たしかマジックアワーの美しさは、日の出や日の入りの前後、ごく僅かな時間しか見られないものである筈だった。わたしたちは今どれだけの時間、この不思議な空のなかにいただろう? 「ここの空は」  私の疑問を感じ取ったみたいに、少し低くて幼い声が、まだ夜をたくさん含んでいる空気を柔らかく裂く。 「朝が来てほしいと願うまで、ずっとこのままだよ」  この言葉の意味が分からなくて、でも(まだこのままでいたいな)と思う私のこころに反応するみたいに、朝焼けは、いっそう煌々と燃えるのだった。 「……きみと話したいのだけど、いい?」  そうやって私が問いかけると、朝焼けの色彩を拾って様々な色に変わるその瞳をこちらに向けて、少年は「いいよ」と返事をした。  いくつかの会話を繰り返して分かったことだが、少年に名前はなくて、そして話すことが、意外にも好きなようだった。
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