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「きみはどうして、夜明けの空にいるの?」
「――きっと、あなたと同じ理由だよ」
質問ばかりの私に、しばらく考えてから少年はそう答える。どういう意味だろう?私と同じ理由。私が夜明けを好きだと思う理由って、一体なんだろう。
「きみは、きみの船は、何を目的に動いてるの?」
私を見ていた少年は、ひとつふたつ瞬きをした後、ずっと太陽が隠れたままの山へ目を向けた。
影絵のような山の稜線から、いろんな色が閃光のように空に伸びている。少年の小さな唇から白い息がたなびいて、空の沖の方へと流れて溶けていく。わたしは知らぬうちに息を止めて、返事を待っていた。
「……どうかな。僕や船には、目的はないのかもしれない」
「じゃあどうして」
「この船に乗る人は僕が決めるわけじゃないよ。自分たちで選んで乗りに来るんだ。だからきっと、目的があるのはあなたたちの方」
あなたが選んで船に乗ったんだよ、そう言われて、わたしは、ひどく動揺していた。
――そんな。そんなことあるはずないよ、こんな船に用事はないもの、だって、わたしは。
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