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夜明けの波間に
夢だと自覚する夢は何度かみたことがあった。夢でなければいいのにと思う夢は、初めてだった。
名前も知らない色の空だ。
紺と紫の夜の裾と、オレンジと赤の朝の気配が、遠い山の稜線の程近くで滲んでいる。すぐ近くで星や月がずいぶんと穏やかに光っていて、その輝きはまるで水の底に落ちた硝子のようだった。
ぼんやりとしながら自分のすぐ脇を見ると、白い塗装がざらざらと剥げた木の縁がある。そこへそろりと手をついて覗いたら、はるか下に黒い墨絵のような街があって、ぽつぽつと光る街灯が見えた。街はまだ、眠っている。
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