第一話 帰郷

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 アニエははっと目を覚ました。  また王子様の夢を見ていたようだ。でも、いつもこの場面だけ。王子様の顔を見ようとするといつも目が覚めてしまう。  もはやそれが本当に見た光景なのか、ただの夢なのかもよく分からなくなっていた。  アニエはため息をついて外を見た。  馬車はあいかわらずかわり映えのしない小麦畑を走っていた。収穫期が迫った小麦が色づきはじめ、ゆったりと穂が揺れている。  次に大きなあくびをした。  ――マルムまであとどれくらいだろう?  これから八年ぶりにマルムの町に帰るところだった。  行方不明になった後、アニエは母の生まれ故郷であるサリタの森に帰っていた。  サリタの森は「古き森」と呼ばれる森の一つだ。  古き森に住む魔法使いは「森の魔法使い」と呼ばれている変わり種の魔法使いだ。とはいえ、エルフ族の血が流れているという伝承があるものの、実際には町の魔法使いとほとんど変わりはない。ただ、美しいストロベリーブロンドの髪をしていて伝統的な生活を好む、という特徴があるぐらいだった。
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