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「そういえば、ロラン・トレムって子、知ってる?」
「もちろん。珍しい灰色の髪をした子でしょ」
「そう、その子」
「十一歳で飛び級入学して二年で黄色マントまで取得しちゃったから、学院はじまって以来の天才だって言われてるよ。アニエちゃん、知ってるの?」
「時々、図書館で会うから。エルフやユニコーンに興味があるみたい」
「へえ」
ニーナは大げさに驚いた。
「あの子、いつも一人で澄ましてて、ろくに挨拶もしないのに」
と怒ったように言う。
「そうなの? 人懐っこい子だと思うけど」
「嘘だ」
「ちょっと変わった子ではあるけどね」
「ものすごく変わってるよ」
どうやらニーナはロランことはあまり好きではないような口ぶりだ。
「色々と噂話もあるし」
ニーナはあたりをうかがって小声になった。
「あの子、三つ子山脈の向こうから来たんだよ。なんでも、闇魔法を使って追い出されたとか」
「アヴィンから聞いたけど……でも、雨乞いの儀式には否定的だったし、ただの噂話じゃない?」
「ヘンリー・ロウが言ってたんだよ」
「私はヘンリーのこと知らないから」
「ヘンリーは嘘をつくような子じゃないんだよ」
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