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その夜、窓から空を見上げて気がついた。
雲一つない星空が広がっている。久しぶりに見る星は再会に感動して涙を浮かべているかのようにキラキラと瞬いていた。そして、その中央にぽっかりと丸い月が輝いていた。
――満月だ。
アニエはロランの言葉を思い出した。
――次の満月の晩にモリスの森に行こうよ。
なぜ、満月の晩なのだろう? と今さらながら疑問に思った。ユニコーンやエルフ族が満月の晩に現れやすいなんて話があっただろうか?
アニエはベッド脇の本棚からユニコーンやエルフに関する本を取り出してパラパラとめくってみた。けれど、それらしい記述はどこにもない。そして、そんなことをしている間に、すっかり目が覚めてしまった。
アニエは満月を見つめた。
そしてふと思い立つと寝巻きを着替えて茶色のマントを羽織った。
このマントは古き森特有のマントだった。森で採れた薬草を独自の方法で染めたもので、魔よけの力があると言われている。けれど見た目がぬかるんだ土色をしているせいか、または土臭いにおいがするせいか、町へ持っていっても売れないらしい。そのため、森の魔法使いの目印のようにもなっていた。
アニエは机の上の時計を見る。
まもなく深夜0時。
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