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第五話 怪奇クラブ
一晩あけて、アニエは昨夜見たものについて悩んでいた。
自分の見たものは本当に狼男だったのだろうか?
獣人は大陸戦争のときに滅びている。あれから何千年も経っているが、獣人が生き残っていたという話は聞いたことがない。
けれど、確かに二本足で歩く狼だった。
あれはいったい何だったのだろう?
見間違い?
夢?
いや、そんなはずはない。
確かに狼男だった。
「アニエちゃん、どうしたの? そんなにスープを見つめて、スープ占いでもはじめたの?」
アニエが顔を上げると、食堂にはほとんど人がいなくなっていた。手つかずのコーンスープはすっかり冷えていた。
「狼男って生き残ってると思う?」
アニエはぼそりと言った。
「え、何なに? 何の話?」
ニーナはキャラメル色の瞳を輝かせながらアニエの隣に座る。まわりに誰もいないことを確認してから、アニエはニーナの耳元に顔を近づけた。
「昨日、モリスの森で狼男を見たの」
「え、狼お……」
アニエはあわててニーナの口に人差し指を当てる。
「内緒だから」
ニーナは口を閉じたままうなずく。それを見て、アニエは指を離した。
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