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そういえば、レヴィ・ローレンからも森に深入りしてはいけないと言われていたことを思い出した。母も森に近づくなと言っていた。そしてアヴィンも。いったいみんな何なのだろう? アニエはもやもやと腹がたった。
「古き森とは違う。モリスの森だぞ? 分かってるだろ?」
「何が違うの?」
アニエはすっかりムキになっていた。アヴィンに言い返してやりたくてみんなからも忠告も妖精の疑問もすぐに頭の片隅に追いやってしまった。けれど、
「とぼけるなよ。真面目に話しているんだ」
アヴィンは静かに言った。その声音はアニエの胸にずしんときた。それなら、あんな冷たい言い方をしなくてもいいのに。そう言ってやりたかったけど言葉は出なかった。かわりに涙が出そうだった。
「まあ、まあ、落ち着けよ。とにかく、狼男の詳細を聞こう」
ルミルが慰めるようにアニエの肩を叩いた。
アニエはぐっと涙をこらえて昨夜のことを話した。
「モリスの森ならそんなことがあっても驚きはしないけどね」
「でも、無事でよかったじゃないか。獣人ってすごく凶暴なやつらなんだろう」
アニエはあいまいにうなずいた。
「どうやって逃げたんだ?」
そこを見逃しはしないとでもいうように、アヴィンがじっとアニエを見つめなら聞いた。
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