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「俺はルーザー。ハラクローイ王に任命された当代勇者だ。君たちを助けてやる」
三人とも、まるで救いの神が現れたかのように喜ぶ。
「本当ですか! これで妻の元に帰れます」
「さすがは勇者だ。冒険者なんて偉そうなだけで何の役にも立たなかった」
「このままでは魔物に襲われて死んでしまうところだった。ありがとう、勇者様」
お礼を言ってもらってるとこ悪いけど、この魔物さんたちみんな俺が呼んだんだ。
ぶっちゃけマッチポンプなんすよ。
魔物の軍勢の中、俺は非戦闘員三人を連れて王都へ向かう。
魔族のみんなこういうイベントが好きらしく、俺と戦うふりをしてくれる。
薬師たちを後ろにかばい、ユーちゃん様をかまえる。
「ここは俺に任せて、おまえたちは王都に帰りな。大丈夫。俺は勇者の剣の加護で死んでも死なない体になっているから!」
「シャアアアア!(はっはっは。演技派だなあルーザー。ちゃんと人間の味方っぽくみえるぞー。とりあえずオイラは尻尾でもふっとけばいい?)」
土蛇に指で〝よろしく!〟と合図して戦闘の演技をする。
俺は絶対に土蛇に当てないし、土蛇もわざと攻撃を外す。
『くだらない小細工までするルーくんサイテー☆』
ユーちゃん様はだまらっしゃい。
「ああ、ありがとう勇者! 健闘を祈る!」
薬師たちも無事王都に逃げ帰ったから、ギルドに「強い魔物が異常発生して、冒険者ではどうにもならない」と報告してくれているはずだ。
そうして兵士の皆様を引きずり出すのが俺たちの目的。
さてさて。計画通りに出てきてくれるかな。
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