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15 勇者様のスペシャルマッチポンプ劇場
ハラクローイで薬が不足している。
薬草採取の護衛をするだけで1万EN。
冒険者一同は浮き足立っていた。
「いやぁ、今回はぼろい商売だよな。いつもの倍以上の報酬がもらえるし。お荷物ユーノがいないと取り分が増えていいなぁ」
「ほんとよね。三分割なら3300EN。宿の部屋グレードあげられるわー!」
「ヨ・クボウノ町あたりって強い魔物が出ないから実質労働しなくて稼げるわね」
なんて話をしながら山に向かった。
普段なら雑魚の筆頭スライムかウサギしか出ないようなルートだ。
なのに、なのに。
「な、な、なななんああ、なんで、土蛇がいるんだあああああ!!」
全長5メルトはある巨大な蛇の魔物、土蛇が前方に出現した。
護衛が全員逃げ出し、身を守るすべを失った薬師は手近な木にすがりついて震えている。
「ま、まて、おいていかないでくれ! なんのための護衛なんだ!」
「そんなの知るか。自分の命が最優先に決まってるだろ!」
薬師を見捨てて逃げた者たちは、土蛇の襲撃を受けていた。
どれだけ走って逃げようとも、地面の下を移動して追ってくる。
土蛇は体が土に覆われているから、剣じゃどうにもできない相手だ。
額にあるコアを攻撃するしかないが、歩兵では届かない。
そして逃げた先に、キラービーが現れた。
「クソ、蛇のコアもキラービーも高いところにいすぎて剣じゃ届かない。ユーノ、テメェちゃんと仕事し……」
飛行系の魔物を狙撃してくれるユーノを切り捨てたのは、他ならぬゴーマンである。
「魔法でどうにかできないの!?」
「詠唱中に逃げ回るから魔法が当たらないわ! ゴーマン! あんたがユーノを追い出したからよ」
「お前らだって賛成しただろ!」
後衛をおろそかにしたが故に、命の危機に陥っていた。
そして別のパーティーもまた、本来ならこの地に現れない鉄ネズミと遭遇して苦戦していた。
「薬草採取の護衛なんて楽勝なはずなのに!」
取り落とした剣は、鉄ネズミがたかって刃を食ってしまった。
鎧も次々にかみつかれて、見るも無惨に穴だらけだ。
なんで若造のルーザーなんかが勇者に選ばれたんだとくだをまいていた者たちだ。
そして薬師たちがすがりついている木、それはトレントである。
木が突然暴れだし、薬師も逃げまどう。
魔族軍大勝利な様子を、俺は上空から見物していた。
アストモが背に乗せてくれているのだ。
「おれの出番はなさそうだな」
「そうだなぁ、思った以上に冒険者は弱かった」
護衛を失い、魔物の群れの中に取り残された薬師が三人。途方に暮れている。
「あいつらはどうする。食っていいか」
「俺はやさしいから、王都に連れて帰ってあげよう。アストモ、ちょっとあいつらから離れたところに俺を下ろしてくれないか」
アストモがヘイワナに降りて、俺は山の入り口で震えている薬師たちのもとへ行った。
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