2 勇者と3匹の子スラ

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2 勇者と3匹の子スラ

「あーあ、なんでよりによって俺なんだよ。兵士はほかにもいくらでもいるのに」  兵士長なんて、ひとりでドラゴン仕留められるって聞いている。スライム並みの俺が行く意味がわからん。  ぐちぐち言いながら草原を一人で歩く。  かわいい女の子がパートナーになってくれたらやる気100倍なのに、冒険者ギルドに行こうとする俺を剣が阻止した。 『オラ、かわいい子が魔物に傷つけられるのを見たくないっす。なんで女の子を戦場に連れて行こうとしてるっすか』 「えええ……。勇者パーティーっつったらかわいい魔法使いにムネデカな女剣士にメスガキシーフって相場が決まってるだろうがよ。昼は戦場、夜はゲヘヘ」 『それどんなエロ本』  エロ本知ってるのかよ剣。どうやら剣の声は持ち主である俺にしか聞こえないらしく、ギルドで剣の声に返事をしていたら危険物を見る目をされた。傍目にはずっと独り言をいうヤベー奴。  男だらけのむさ苦しい旅なんてしたくないし、結果俺は一人旅することとなった。 「あーあ、美少女型モンスター出ねーかなあ」 『それどんなエロ本』  ばれてーら。昔、親父の部屋に美少女型モンスターにお仕置きをする本があった。  お袋に「これなに?」と見せたら修羅場になった。悪いことをしたなあハハハ。  と、歩いていたらスライムご一行と遭遇した。  やや大きめが一匹、普通サイズが一匹、一回り小さいのが三匹。  一人だとちときつい数だが、まあスライムだし、口は悪いが勇者の剣があるし。 「おらあああああ!!!!」  一番でかいのに斬りかかる。 「ぐう、こ、ここは父さんが食い止める。だから、おまえたちは逃げるんだ」 「あなたを置いていけるわけないでしょう!」  なんだこの声。スライムから聞こえてくるような。 『ユーちゃん様の主になると、固有スキル全種族言語翻訳がつくっす。だからこれはスライムたちの声っす』  そんなスキルいらねえ。 「さあかかってこい人間! わたしの家族にはかすり傷ひとつ付けさせない!」 「パパ、パパああああ!」 「母さんと一緒に逃げるんだ坊やたち!」  俺の方が悪役状態である。しかし俺はぼっちなのにスライムが妻帯して子供三匹もこさえてるとか。 「くくくっ、ははは、はーっはっはっ! 悪く思うな! 俺はやるときはやる男!」  父スライムにとどめの一撃を振り下ろした。 「いやあああ、あなたあああああーーー!!」 「パパあああああああーー!!」  やったぜ俺。人類のためにスライムを一匹を駆逐した。ふんぞり返っていたら 「パパの仇!」 「だめ、やめなさい坊やたち!」  防御する間もなく死んだぜ。  死因:三匹の子スラ。
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