ピアス 〜それは「結婚指輪」に相当すると主張する〜

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 狡い人だ。  ピアスを外せば、穴は塞がる。多少の傷痕は残るかもしれないが、それもいずれ薄れるだろう。  まるで、二人の関係性のようだ。  男女のように、交際から結婚へ、さらには子どもをもうけて育て上げるといった、ライフステージの変化はない。  これまでも、これからも──国の法律が変わりでもしないない限り、あの人とは、何処まで行っても他人同士だ。  もちろんパートナーシップ制度があるのも知っているが、利用したところで法的な「婚姻」とは違い「家族」になれるわけではない。  養子縁組だと「家族」にはなれるが、あくまで「親子」だ。「婚姻」のように法律に導かれる「貞操義務」があるわけでもない。  法律や条例など、他者に侵害されない権利を主張出来る根拠はない。  互いの一緒にいたいという気持ちだけで繋がっている、とても脆い関係だ。  常に手をかけ努力しなければ、二人の関係は自然と希薄になり消滅するだろう。  眼を凝らせば僅かに知れるほどの痕だけを残して、元よりそこには何もなかったかのように。  それこそ──ピアスホールのように。
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