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その夜、俺は渋々姉は喜々として公園へと向かった。
「なぁ、やめといた方がいいんじゃないか? 姉貴だってその……あるんだろ? 霊感みたいなやつ」
「さぁ、どうだろうね。まぁ大丈夫だって。ひとりで行くわけじゃないんだし。頼りにしてるよ、弟くん」
妙に浮かれた調子で姉は俺の肩をパシンと叩く。
「いってぇなぁ。そういえばネットで出てきた事件とかっていうのは何だったんだ?」
あの時は真奈美が戻ってきて聞きそびれていた。
「ん、何だったっけ。ああ、そうそう。確か何か事件があったみたいなのは見つけたんだけど内容までは詳しくわかんなかったんだよね」
「なぁんだ、そうだったのかよ。あ、見えてきた。結構暗いぞ? 本当に行くのか?」
夜の公園というのはどうも薄気味悪い。一応照明はあるのだがしんと静まり返り何となく人を寄せ付けないような雰囲気があった。
「行くに決まってんじゃん。ぐるっと一周回ってくるだけだよ。んもぉ、何もないってわかった方がスッキリするじゃん。先行くよっ」
姉は姉なりに俺のことを気遣ってくれているのかもしれない。でもやっぱり気が進まない。俺が入口で躊躇していている間に姉はさっさと公園の中に入っていってしまった。
「はいはい、わかりましたよ」
気乗りしないまま公園の中に一歩入った瞬間、背後からぽんと肩を叩かれ思わず悲鳴を上げた。驚いた姉がこちらに駆け寄ってくる。恐怖で固まっていた俺は背後から聞こえる女性の「うわっ! びっくりした!」という声に急いで振り向いた。
「ええと?」
そこには同年代だと思われる女性が犬を連れて立っている。見覚えのあるようなないような……。
「坂口君、だよね?」
「ええと……。あっ! ひょっとして、間宮さん?!」
何と声をかけてきたのは小学三年生の時同じクラスだった間宮さんだった。何となく当時の面影があるのと、少し甲高い声と舌ったらずな喋り方に当時の記憶が蘇る。
「あー、やっぱりそうだ。何よ、こっちに戻ってきたの? どっか引っ越したって聞いたような覚えがあるんだけど」
「ああ、お盆で帰省しててさ」
「やぁだ、私も。ええと、奥様ですかぁ?」
姉を見て間宮さんは首を傾げる。
「いえ、まさか! 姉の美里です。和也の知り合いですか?」
「あら、ごめんなさい。お姉さんでしたか。私は間宮と言います。坂口君とは小学三年生の時同じクラスだったんですよぉ。残念ながらまだ独身なんで苗字変わってません。ま、仕事が忙しくて今は結婚より仕事って感じなんですけどぉ」
相変わらず間宮さんは話し好きなようで聞かれもしないのに自分の近況をぺらぺらと喋り始めた。姉もよせばいいのに「まぁ、そうなんですか!」「へぇ、それで?」などと合いの手を入れるのでなかなか話が終わらない。痺れを切らしたのか間宮さんの連れていた犬がワンと吠えた。
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