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エピローグ
遅めの夏休み。私はレンタカーで彼に会うために車を走らせた。
空にはうっすら鱗雲。その横をスーッと伸びた飛行機雲は次第に薄れて消えていく。
カーステレオからは、あの時に聞いていた洋楽のラブソング。
私はその歌を口ずさみながら、高揚する気持ちを持て余していた。
一年前、たった五日間一緒に過ごしただけの私を待ってくれているだろうか…
約束の時間が近づくにつれて不安がつのって、私はあの山へと車を走らせた。
そして、あの時行けなかった滝へと向かうと、そこには見覚えのあるSUVと、カメラを構える神谷さんの姿があった。
心が震えた。
私に気づいた神谷さんは、一瞬驚いた顔をして、少し呆れたような顔で笑った。
一年の月日を飛び越えて、私たちの夏の終わりの続きが始まろうとしている。
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