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 六畳一間にテレビのみ。余計なものは何もなく、一組布団が置いてあり、清潔なシーツとタオルとアメニティーが用意されていた。それでも十分だ。  色んなことがありすぎた一日に、心身ともに疲弊した私は、共同のオンボロの風呂場でシャワーに入り、買ってきた服に着替えて布団で死んだように眠った。    翌朝、私は隣のコインランドリーで洗濯を回し、待っている間、朝日を受けてキラキラ光る朝露に濡れた空き地の雑草をぼんやりと眺めていた。    「あれ、山下さん?」  ハッとして声がした方へ視線をやると、そこには神谷さんの姿があった。  「え?神谷さん?」  「帰ったんじゃなかったの?」  「ええ、列車が止まってしまっていて…」  「えー!つくづくついてないね…」  神谷さんはクククッと笑った。  「えっと、神谷さんは…家この辺なんですか?」  「いや、俺は旅の途中で、ここに泊まってる」  「ここ?かつら民宿に?」  「そう」  「山下さんも?」  「ええ…」    私たちは「何だか縁があるね」と笑った。  「旅って、何日目なんですか?」  「二日目。昨日から…山下さんは帰れなくて仕事とか困らなかったの?」  「遅い夏休みで、あと四日間は休みなんです」  「そっか、俺も同じ」    もう二度と会うこともないと思っていた人との偶然の再会に、なんだか運命的なものを感じてしまい、すっかり気を許してしまっている自分がいた。
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