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神谷さんの提案で、休みの間、かつら民宿を拠点にカメラの旅にお供することになった。
少し車を走らせたところにある海や、植物園、そこいらの田舎道…被写体は尽きることがなかったし、話のネタも尽きることはなかった。
時々カメラを交換して撮影したりと、遊んだりもした。
私のはフィルムカメラだから撮りっぱなしなのだが、神谷さんのデジタル一眼レフで撮った写真は、かつら民宿の部屋でPCにつないで鑑賞会をした。
忙しない日常に追われた時間や、最悪の出来事を忘れて、神谷さんと過ごす時間があまりにも楽しくて、いつまでもこんな時間が続けばいいのになと思った。
最終日、遠出はせずにかつら民宿の周りを散策した。
沿道に咲くコスモスや、空き地のススキを眺めては写真におさめた。
私は終わってしまう夏休みが…神谷さんとの別れが、名残惜しくて悲しくなった。
四日間、部屋は違えど同じ宿で過ごしたというのに、私に指一本髪の毛一本触れることのなかった神谷さんの紳士ぶりが、なんだか逆に恨めしい。
「神谷さんのおかげで楽しい夏休みになりました。嫌なことも忘れられて…また日常に戻って…頑張れるかな…」
神谷さんは、私が乗る列車がくるのをホームまで出て一緒に待ってくれた。
「俺も楽しかったよ。こんな華やかな旅になるとは思ってもいなかった…」
私たちは、連絡先も、下の名前すらも教え合っていなかった。
あ、私の名前はバレているか…
列車がホームに入って来て、初日に着ていたのと同じワンピースの裾が、ふわりとなびいた。
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