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 どのくらい車を走らせただろう…  すっかり暗くなった曲がりくねった山道を、神谷さんは黙って安全運転してくれている。  麓に向かっているのは間違いないのだが、灯りもない山道は、なんだか別の世界に迷い込んだように感じた。 私を安心させるためか、神谷さんは「あと五分もすれば、山抜けるよ」と静かに言った。  私は「はい」と返事をしたはずなのだが、喉に引っかかってかすれた声は、神谷さんに届かなかったかもしれない。  私は闇に乗じて、こっそり涙を拭った。    本当にものの五分で木々に囲まれた道から抜け出て、視界が開けた。街灯の灯りがちらほら光っている。  カーナビも先ほどまで真っ暗だったのだが、山道を抜けて、市街地に向かっている表示となっていた。  私はほっと肩を撫で下ろした。  車でほんの二十分。歩いたらどれくらいかかっただろう…  「あの…本当にありがとうございました。適当なところで降ろしてください」  「んー…山下さんはこれからどうすんの?」  「帰る方法を考えます…」  「じゃ、駅まで行くよ」  「え!そんな、ご迷惑…」  「いや、ここで降ろす方が後味悪いから」  「…それじゃあ、お願いします」  山道を下って最初の信号で止まった時、何気に窓の外に目をやると、道路脇に見慣れた車がハザードランプをつけて停車していた。    「あの車…」
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