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「え?あの車、彼氏の?」と、神谷さんが驚いた声で尋ねた。
「そう…ですね…」
私は存在を忘れてカバンにしまい込んでいたスマホを取り出した。
"生きてる?"
彼からは、そのたった一文のメッセージが入っていた。
無性に腹が立った。込み上げる怒りのやり場に困り、私はゆっくりと深く深く息を吐いた。
「どうする?」
神谷さんは少しだけ車の速度を落として、彼の車の横を通り過ぎた。
「いいです…もう、彼とは終わりにします…駅まで…」
私が「お願いします」と言い終わらないうちに、スマホの着信音が鳴りだした。
彼からだ。
神谷さんはメイン道路から外れて、脇道に入って車を止めた。
そして、神谷さんは振り向いて私の顔をじっと見た。
「出ないの?」
私は思わず強い口調で「出ません!もう、声も聞きたくない!」と答えていた。
神谷さんは、しつこく鳴り続けるスマホを私の手から取り上げて「仕返ししようか?」と悪戯に笑った。
「え?」と私が驚いていると「別れるんでしょ?」と、神谷さんは続ける。
私はそう問いかけられて、私を置いて車を発進させた時の彼の憎らしい顔を思い出して「別れます!」とキッパリ答えた。
神谷さんはニヤリと笑って「もしもし」と電話に出た。
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