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ミンミンにいにとニイニイちゃん。
「ちー……にー?」
ニイニイちゃんは、見たっ!
そこはセミバンドメンバーたちが使うレッスンルームのひとつ。
楽器が置いてあるお部屋よりも小さいそこは、個人レッスン用である。
「ヨォオオーシッツクツクホーシツクツクホーシ」
これはツクツクにいにの鳴き声である。
さらにはーー
「もぅ、こんなところでっ!」
照れながらも背後からびたっとくっつくツクシに嬉しそうにしている、マネージャーのゼンにいに。
ふたりはカップルで、よくこうしてくっついている。正確に言えばツクツクにいにがくっついている。
「ちー、にー!」
それを見ながら、ニイニイちゃんは思う。
いつかおっきいにいにたちみたいにラブラブなカップルになれないかなとドキドキ、ワクワクしちゃうニイニイちゃん。
――――――カップルになりたい相手は、もちろん……
とことこと、楽器が置いてあるいつもの広いレッスンルームに入るニイニイちゃん。
ひとりでいると、すんごい広々としていて、ちょっと不安になっちゃうけど……
バンドの全体レッスンが始まるまでまだ時間があるから、まだにいにたちは来ないかな?
ツクツクにいにはゼンにいにとイチャイチャしてるし……。
――――――その時だった。
「ニイニイちゃん、いた」
ミンミンゼミのにいにことミンミンにの声に、ニイニイちゃんはぱあぁっと顔を輝かせて振り返る。
(ち~に~っ!)
ミンミンにいにが一番早く来てくれた!
今こそ、チャンス!
「ち~~~~に~~~~っ!」
ニイニイちゃんは、ツクツクにいにの真似をして、頑張って鳴いてみた。
ミンミンにいに、大好き!
大好きだよ!
大好きを込めて、ニイニイちゃんが鳴く!
「わぁ~っ!上手だね。いつか好きなセミができたら、そう鳴いてみて!」
そうぱぁぁっと顔を輝かせながら、頭をなでなでしてくれるミンミンにいに。
ミンミンにいにがなでなでしてくれるのは嬉しいけど……、
ニイニイちゃんが思いを寄せるのは……。
ミ「ニイニイちゃんかわいいし、一所懸命だからきっと好きになってもらえるよ」
ニ「ちーにぃ……」
ミンミンにいにはそう優しく微笑むだけ。ミンミンにいには好きになってくれなかったのかな……?
「でも、知らないセミに鳴いたらダメだよ?連れていかれちゃったら大変だ」
「ちー、にーっ!?」
びくびく。連れて行かれちゃう……っ!?ひえぇ、恐いよぅ……っ!!
「あはは、恐がらせちゃった?大丈夫、大丈夫。ぼくがそばにいるからね」
ぷるぷふと震える身体を優しく抱き締めてくれるミンミンにいにのあたたかさに、ニイニイちゃんはほっと安堵する。
でもいつか、きっとミンミンにいにを振り向かせて見せる……!
そう、心に決めたニイニイちゃんなのであった。
「ち~~~に~~~!」
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