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ツクツクタイバン。
――――――それはとある日のことである。
「ちー、に~?」
「あれ、だあれ?」
ニイニイちゃんとミンミンにいにがセミバンドのスタジオを訪れると、いつもは見かけないセミ族がいたのだ。
顔はツクツク。構えているサンシンもツクツク。でも知っているツクツクこと、ツクツクボウシのツクシとどこかが違う。
「うーぃーうぃーうぃーうぃーいーんっ」
――――――と、スタジオにいたツクツク(?)の鳴き声は、いつものツクツクとは全く違って……
「誰っ!?」
「ち~に~っ!?」
思わずミンミンにいにもニイニイちゃんも驚愕。
しかし、その時、彼らの後ろから聞きなじみのある声が聞こえてくる。
「この鳴き声は……クロツク!」
彼らのよく知るツクツクのツクシである。隣には恋人のゼンもいる。
「みーどぅーさぬ」
するとツクツク曰く、クロツクがそう答える。
「……えっと?」
「ち~に~?」
クロツクの言葉にミンミンにいにとニイニイちゃんが首を傾げる。
だが、ツクシは気にしていないようで、力強くこう告げた。
「――――――鳴けば、分かる」
そしてサンシンを構え、デンデンデンと奏でる。
「うーぃーうぃーうぃーうぃーいーんっ」
と、クロツクが鳴くと……?
「ギーィーツクツクツクッギーィーィーツクツクツクッ」
続いてツクツクのツクシが鳴き声を放つ。
「ち~に~っ!?」
いつもと違うツクシの鳴き声に、ニイニイちゃんびっくり!
「ふふ、びっくりしちゃった?」
ニイニイちゃんの反応に、ゼンが微笑む。
「タイバンやる時はあぁなんだ」
「ち~に~っ!?」
「タイバンだなんて大丈夫かな」
苦笑しながら告げるゼンに対して、心配するニイニイちゃんとミンミンにいに。
「でも、言葉が通じないから」
と、ゼン。
「音楽で通じ合う…!」
「ち~に~っ!」
その言葉にミンミンにいにとニイニイちゃんが感心したように頷く。
そひてタイバンしつつも楽しげに鳴いているスタジオに……
「何だ?」
「ん……、あまり聞かない鳴き声?」
アブラゼミのアニキとヒグラシちゃんもやってきて不思議そうにニイニイちゃんたちと合流する。
「よく分からんが、俺たちもやるべ!」
そう言ってアブラゼミのアニキが……
「ジージ、ジジジジジッ!」
セミギターを取り出し鳴き始めれば、ツクツクたちと一緒にセッションが始まる。そうしていつものようにみんなで音頭をとったり、鳴き声で歌ったり。いつの間にかクマゼミことクマさんも混ざって楽しく盛り上がる。
そうしてセッションを終えて、みんなでおしゃべりタイムを迎えたのだが、クロツクの言葉は相変わらず難しいようで……。
「あんまりよく分かってないけど、親戚!」
と、ツクシ。
クロツクことクロイワツクツクは南の方にいるセミ。ちょっと訛っているけれど、音楽で通じ合ったからもう安心なのだ。
「イチャリバ、チョーデー」
と、ここでクロツク。
「……イチャイチャ、リバBLが読みたい、だって!」
ツクシがすかさず訳す。音楽で通じあったから、通訳もお手の物なのである!
「お部屋にあったかな」
「本棚見る?」
ツクシの言葉に本棚やメンバーの私物を探そうとするセミたちだったが……その時、クマさんが口を開いた。
「それは、出会ったひとは、みんな等しく兄弟って意味だぞ」
『え』
「ち~に~っ!?」
クマさんの言葉に一同がびっくりするが、クロツクはこくんと頷く。
そう言えば、メンバーたちは思い出す。
ーーークマさんも南の出身だったな…と。
※※※
そうして、クマさんの通訳の元、クロツクと楽しい時間を過ごしたメンバーたち。
そしてこの後は仲間と飲んでくるというクロツクを見送ることになったメンバー。クロツクはどこかで見覚えがあるようなセミ族たちが迎えに来たのです。
一同あれー??と、思いつつも、
「ち~~に~~!」
「ち――――じ――――!」
ニイニイちゃんが、ニイニイちゃんによく似た、でもニイニイちゃんよりちょっとちっちゃいニイニイゼミになでなでしてもらってるのを見て一同一気に……ふにゃりと萌えた。
クロさん曰く、クロイワニイニイと言うらしい。
そして、クロツクたちを見送り、――――――小休憩。
「クロツク、たくさん話せてよかった」
「うん、すげぇおじいだな」
「……おじぃ?」
ツクシが首を傾げる。
「孫をよろしくって、言ってたぞ」
「なぬ――――――っ!?クロツクおじぃ~~~~っ!!!」
まさかの衝撃の事実。セミ族は実は青年期が長いと言われており、祖父と孫が兄弟のように見えることがあると言う、不思議な種族なのである。
「知らなかったのか」
「親戚だとは知ってた。でも親戚とも、音楽で語り合う……!」
「……」
実はツクシの親戚は南の方に多いらしい。
でも音楽で語り合うので特に気にしていなかった。これもセミ族あるあるである。
いや、ツクツクあるあるである。
因みに、ニイニイちゃんも南の方におじいちゃんがいるそうで。
「ち~~に~~」
「さっき久々におじいちゃんに会えたんだって」
ミンミンにいにと手をつないで嬉しそうに語るニイニイちゃん。
さっきのおじいの仲間の中のクロイワニイニイはニイニイちゃんのおじいだったのである。
「ち~~に?」
そしてニイニイちゃんが差し出してきたのは、伝説のセミバンド【セミィー☆】のアルバムである。その表紙に載っていたのは……
「これ、クロツク……、おじぃ~~~~っ!?」
ツクシのいじぃは伝説のセミバンドのメインボーカルだったのである。
よくみるとそうだったねと、ハッと気が付くおちゃめなところも、セミ族あるあるだったりする。
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