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セミぬい
ちくちく、ぬいぬい、
「何つくってるの?ゼンちゃん」
ある日バンドメンバーのリラックスルームにて、何かを作っているツクツクのゼンを見かけたヒグラシちゃん。
「自分をモデルにしたセミぬいだよ。ヒグラシちゃんもどう?」
ゼンが作っているぬいを見せれば。
「自分をモデルに……か。うん、ヒグラシゼミは……好き」
「うん、じゃぁ作ろっ!」
ゼンに誘われヒグラシちゃんもちくちくちく、ぬいぬいぬい。
「ち~に~?」
そこに、ニイニイちゃんもとことこやってくる。
「セミぬい作り、ニイニイちゃんもやってみる?」
「ち~に~!」
ゼンに誘われたニイニイちゃんも早速仲間に加わります。
さっそくみんなでちくちくちく、ぬいぬいぬい。
ニイニイちゃんも、ゼンにいにに作ってもらった型紙をきりきり、ヒグラシちゃんに糸を通してもらった針で、ぬいぬいぬい。
・
・
・
『できたぁーっ!』
こうしてさんにん渾身の自分ぬいができたのだ!
ツクツクボーシ、ヒグラシ(ぜみ)、ニイニイゼミ!
「ところでこのこ、作ったけどどうするの?」
首を傾げるヒグラシちゃん。
「俺はツクシにあげるよ。持ち歩いてもらうの」
と、ゼン。
「えっ!!」
驚くヒグラシちゃんに対し……。
「ち~~に~~っ!」
ゼンの言葉を聞いて、ニイニイちゃんもミンミンにいににあげようと決意した!
そしてバンドメンバーが来たところで、早速ツクシに自分ぬいをあげるゼン。
「すき」
「知ってる」
ツクシはゼンを抱き締めながら喜ぶ。その様子を見たニイニイちゃんも……。
とことことこ。
ミンミンにいにのもとへ向かいます。
そしてニイニイちゃんぬいを掲げ、元気に……。
「ち~~に~~っ!」
ニイニイちゃんぬいをプレゼント!
「わぁ……っ!ニイニイちゃんぬい!かわいいなぁ。とっても嬉しい!ありがとうね、ニイニイちゃん!大切にするよ」
嬉しそうに微笑むミンミンにいにになでなでしてもらったニイニイちゃん。
「ち~~に~~っ!」
ニイニイちゃんもとっても嬉しそう!
――――――そんな中、ヒグラシちゃんはと言うと……?
「私は、……んー……。自分用……?」
でもいいのだろうかと、ひとりでヒグラシぬいを抱き締めていれば。
「くれないのか?ジージージジジジジッ」
いつの間にか後ろにいたアブラゼミのアニキに思わずびっくり……!!
「……べ、べつにあんたのために作ったんじゃ…ないから」
そう言うヒグラシちゃんですが……。
「ジージージジジジジッ」
まるでヒグラシちゃんの気持ちを理解しているかのように、アブラゼミのアニキがラブコールを響かせます。
「……んもぅ、分かったからっ!大事にしなさいよっ!」
ヒグラシちゃんは、アブラゼミアニキの猛アピールに渋々観念。ヒグラシぬいを押し付けたのでした。そう、渋々……!押し付けたのだ!
そして見事にヒグラシちゃんお手製のヒグラシぬいを手にし、大切にヒグラシぬいを抱き締めるアニキは……。
そっと顔を上げたヒグラシちゃんのペリドットのような瞳が輝いたのを満足げに見つめていたけれど……。
すぐに帽子で目元を隠してしまった照れ屋なヒグラシちゃんを、とても愛おしいと思うのでした。
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