ティーナイト

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「…でも私、病気じゃないよ…」 「あのねえ。この状態見て病気でも何でもないって言われてもねえ…いや多分そうなんだろうけどさあ…」 緋那は頭を抱えた。 「それでホイホイそうですか、って言える訳ないのよ、こちとらはさあ」 「別に貴女がゆかりを助ける義理はないでしょう」 「何を?出来る限り助けるつもりよ?」 だがそこで緋那は顔一つ変えず唐突な断言だった。小紫が怯む。霧夜はそのやりとりを見つめていた。朱鞠内緋那は強い女だ―――それを音無霧夜は理解していた。 「…不可解ですね」 「不可解でも何でも結構なんだけどさ。こちとらこれでホイそうですかって人を見捨てられるほどじゃないのん。それは大人として、そして私として、カッコ良くない」 「…」 朱鞠内緋那のそれは善意というより美学であり、意地であった。それを霧夜も小紫も一瞬で理解した。だがゆかりの視線には困惑と諦念があることを霧夜は看破した。 「この三郷の冬も最後。私も患者さん皆見送って。そして診療所も最後の移転でサッパリ畳んで転勤なんだけど」 「…」 「それでも、まあ、居心地良かったからね、ここ」 緋那は白くなりそうな息を吐きだして、微笑んでいた。少女っぽいが、大人の微笑みだった。 「まあろくでもない人も居なかったとは言わないけどさ。それでも最後は綺麗に畳みたいし、―――あの子もそう願っているし」 「舞雪の願いを汲むのですか」 「それが友達だからね」 朱鞠内緋那は傲然としたものだった。小紫の牽制するような言葉に対しても退く気配はなかった。 「ま、それだけでもないんだけどさ。この朱鞠内緋那様が助けるべきと判断したんだから助けるというね、それだけの話よ。無論価値判断はあるわよ。そこに。でもゆかりちゃんは別にそこから漏れてる訳じゃない。私が手を差し伸べるに足ると判断しただけ」 「…」
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