ティーナイト

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「という訳なの。自己紹介もまだだったかしら。刀の付喪神と聞いているわ、小紫さん」 「不要です。朱鞠内緋那。貴女の人物像は、良く分かったつもりです」 突き放すような言葉だった。だが緋那は退かずに笑っただけだった。不敵な笑みである。 「しかしゆかりちゃんもまあ、いつの間にか妖怪のお姉ちゃんに気に入られちゃったとは、この緋那先生もビックリだわ」 「私も、緋那先生が吸血鬼なんてはじめて知った…」 「柚希ちゃんや真冬ちゃんにはナイショよ?こういうのは分かっている人間だけが知っていいものだから」 唇に手を当てての朱鞠内緋那。悪戯っぽい微笑みである。霧夜がいつの間にか四人目の珈琲を淹れていた。差し出されたそれに緋那は口をつけながら、 「しかしこのサバイバル備品…舞雪から聞いたわ。霧夜の持ち物だったのね」 「そうだ」 「霧夜なら持っていてもおかしくはないけれど、昨日の晩の時点でそれを提供すべきと察して提供出来たのは―――霧夜は流石ね。私も舞雪もそこを踏み越えられなかったのに、容易く一歩先を行った」 そうじゃなかったら、冗談抜きで凍え死ぬかも知れない夜よ、と緋那は言った。小紫も肩をすくめた。 「その点は同意します。音無さんのお気遣いに」 「お兄ちゃんは優しくて、強いから」 そこで向けられた無邪気な言葉。霧夜はただ複雑だ。白い息を漏らしながら、ただコーヒーを乾しただけだった。 緋那が「ふうん」と言いながら、どこか面白そうに、 「お兄ちゃん、か。慕われたわね」 「…駄目…?」 「そう呼べばいい」 だが霧夜はそう答えただけだった。小紫は「それでいいと思いますよ」と笑顔だった。ゆかりも笑う。にへら、というその笑顔は、あの笑顔だった。嬉しそうなその顔だった。
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