ティーナイト

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ティータイムのどこか和やかな時間は、そのあとも少しばかり続いたが、夜も更けていく時間帯である。 焼き菓子まで平らげて、辞去する緋那を追うように、霧夜も持ってきたトランクを閉める。それを見つめていた小紫が口を開いた。 「今日も、色々気を遣って頂きましたね」 その態度は、表情は、本当に良い女のそれだ。霧夜はそう思った。だが決して口には出さない。そんなことで評価されることを、この―――情け深い妖刀は決して是としない。それを知っていた。 だから、 「朱鞠内と仲良くするつもりはあるのか?」 「敵にするつもりはありませんが、理解して貰おうとは思いませんね」 小紫の割り切った言葉。ゆかりもこくこくと頷いている。 「…先生は寂しがり屋なだけ…」 「そうだな」 そうだ。舞雪もそう言っていた、その通りなのである。別にそれを悪と言うつもりもないし、朱鞠内緋那の好意を無碍にすることはないと思うが―――分かり合えるかの話は別だ。 玄関で、二人が手を振ってくれる。妹分の笑顔があった。 「…お兄ちゃん、また明日ね…」 それは今日も明日も続く言葉。―――手を振りながら、音無霧夜は、自分が穏やかな顔をしていることに気づいていなかった。この郷に来てから、一番穏やかな顔だということに、誰もが気づいていなかった。 星空の下に道があり、そしてそれは明日へと続いていた。
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