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どこか遠くで声がする。 「あー!!!ゆかりーーー!!待ちなさいよーーー!!」 「え…?」 ゆかりが少し驚いた顔。駅から外へ通じる道。そちらから白神柚希と白妙真冬が駆けてくるのであった。 ぜえぜえ息を切らしながらホームに駆けこんでくる少女二人。 「ちょっとー!!もう行くなんて聞いてないわよ!!来る時も突然だったのに行く時も突然とか!!」 「…?」 困惑したように立ち止まるゆかりは、永遠子に目をやる。永遠子は微笑んでいた。そういう計らいであるらしかった。 「そうです、そんな素敵な列車に乗って行ってしまうなんて!!」 「黙りなさいよ真冬!?」 「…相変わらずだね…」 ゆかりの微笑み。だがそこで何かが踏ん切れたらしい。客車の開いた扉、そのすぐ傍の握り棒を握りながら、優しい瞳で二人を見ていた。 それは、友を見る瞳だった。 「…お見送り…?」 「…行っちゃうんだ。まだ、フロントの時のごめんなさいも、まともに言えてないのに」 柚希の顔。柚希が何をどこまで正確に知っているのか―――それはゆかりは分からない。ただ、そこにあるのは、友を案じる視線だった。 この子は私が、何をやったかも知らないけれど、それでも友としてくれるのなら―――それでいいと思う、ゆかりがいた。 この子ならば、許してあげていいと思った。 そして、この子は私のしたことを、私の仕業とも知らずに、許さないと言ったけれど、許してくれそうな気がしたし、多分それは、そうだろうと、根拠なく思える、ゆかりがいた。
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