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今日は、そういえば、掃除をしないといけないと思っていた。
小太刀宅を、散らかしたままだ。―――そのままでは小紫もゆかりも困ってしまうだろう。取り急ぎと思い、霧夜はコートを羽織った。マフラーを靡かせて、スケッチブックを片手に、冷え込んだ白神荘の外へと急ぐ。
雪空の下を、白い息を吐きだしながら、早足で街はずれへ向かった。小太刀宅は町の外れの神社の鳥居をゆきすぎてさらにその先、簡易郵便局の隣だ。
最早あばら家のようになった小太刀宅の引き戸を開ける。鍵はかかっていない。
とりあえず、鍋の準備をしたままなのだ。まず片づけをして、妹分に報告しなければならない。
霧夜は最早勝手知ったるような家の間取りだった。
台所には、案の定、散らかしたままの具材である。流石に傷んでいるから廃棄しかない。それらを手早くゴミ袋にまとめながら霧夜は考えを巡らせる。
これから白神荘に戻って、妹分に報告をするが、あの妹分はそういえば朝―――
「―――」
朝―――あの妹分は白神荘に、いない。最初から。俺は、あの妹分と過ごした朝は、たった二回しかなかった。
見回す。声はない。影もない。
―――行ってしまったのだ。
それを霧夜は思い出した。
四つん這いになって、吐いた。
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