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生きた心地がしなかった。
今日は、9月1日。
いつまでも、君の横顔を見ていたかったのに。
君の白い肌に反射した、あの眩しい夏は、もう帰ってこない。
嫌々ながら起き上がって、外に出ようと試みる。
せめてもの癒しとして、海を見ようと思ったのだ。
ドアを開けると、二枚の絵がポストの近くに佇んでいた。
あの絵だ。
僕が何度も脳裏で夢に見たあの海の絵、と。
えっ、僕?
海をバックに笑う、僕を描いた絵があった。
何で君は僕の絵なんて、描いたのだろう。
きっと君のことだから、イニミニマ二モ、とか言うのかもしれない。
あの笑顔を弾けさせながら。
きっと、そうなんだろうな。
思わず、ふっと笑みが零れる。
この夏、僕の好きな季節が「夏」に上書きされた。
でもそれは、「君のいる夏」だったからなのかもしれない。
あんなに嫌いだった夏が、こんなにも終わってほしくないなんて。
僕は夏が大好きだったけれど、それ以上に君が好きだった。
多分、そうだった。
ふと、絵の上に手紙が添えられていたことに気が付く。
僕はすぐさまそれを開いて、文字を目で追った。
空色で海色のその便箋、優しい筆跡に、嬉し涙が一滴、零れ落ちた。
この涙もきっと、この海の一部だったのだろうか。
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