合宿の朝、水汲み場で。

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 湖畔の合宿。  朝早く目覚めてしまった僕は、ちょっと水でも飲もうと水汲み場へと足を運ぶ。まだ夏だと言える季節ではあるが、湖畔の早朝は少し肌寒い。夏の終わりと仲間と過ごす合宿の終わりが重なり、目に映る風景もなんだか切なく感じる。  水汲み場には先客がいた。僕よりも一年ほど前に陸上部の一員となった未空さんだ。未空と書いて、ミク。僕らは未空さん(ミクサン)と呼んでいる。  いつもはキリッとしている未空さんも、起きた直後なのか寝癖がついていたりしていて、なんだか少し無防備。でも、未空さんの知らない一面を知れたような気がして、未空さんに少し近づけた気がして、僕は嬉しかった。彼女のことが気になっていた僕の心臓は、この一瞬の二人だけの時間にトクンと脈打つ。 「おはようございます、未空さん」  水を飲んでいた未空さんは僕の声に少し反応し、笑顔を見せてくれた・・・ような気がする。ただ、少し複雑な表情でその場から立ち去ってしまった。
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