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あれから毎年、夏が終わりを告げる頃に、僕はこの湖畔の合宿所の近くを探索している。今年で3年目だ。僕はもう高校を卒業し、今は小さな印刷工場の新人営業マンだ。
まさか、この場で未空さんに会えるなんて思ってはいない。ただ、あの一瞬の想い出に浸るために、あの水汲み場へと足を運ぶだけだ。
夕暮れの太陽が、周りの景色を朱色へと変える。その色合いは一日の終わりの印(しるし)、あの朝とはまた違った切なさを感じさせる。
ポケットの中に未空さんが好きだったもの忍ばせながら、さあ帰ろうかと湖のほうを振り返ると、夕日を背に懐かしいシルエットが浮かび上がった。
「え・・・、もしかして、未空さん・・・?」
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