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 それから半年後。  私の日常は、胸がときめくような出会いも、恐ろしい事件もなにもなかったかのように続いている。  サエコとは一度も連絡を取っていないし、これから先もやり取りすることはないだろう。  あの男については、どうやら親が捜索願を出したらしいことを風の噂で知った。  私はあれから一度だけ、いつもの電車を乗り継いで晩香町の入り口の様子を見に行ったが、やはり、そこにはなにもなかった。  晩香町は、私にとって忌まわしい場所であり、また慕わしい故郷でもある。  廃屋の扉の奥に、大樹の陰に、あるいは小道を曲がった先に。晩香町の入り口があるような気がする。  アキラが捜し出してくれる日を、私は待ち続ける。そうして、夜には夢を見るのだ。どこまでも続く干潟と、果てしない海の夢を。
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