其の参拾弐

1/2

201人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ

其の参拾弐

「単刀直入に言うと、暁明(シャミン)はもうこの後宮にはいない」 「いない? いないとは、どう言う……」 「……追放だ」 「追放!?」  青蝶は心の準備をしていたつもりであったが、事実はそれをアッサリと上回った。  暁明は知識ある医務官だ。腕も良い。そんな人が、追放されるほどの悪事を働いていたとは思えない。  あの殿舎を与えてくれたのも暁明であった。  あそこなら、自分がいつでも駆けつけてあげられるからと。針房の長が仕事場から青蝶を追い出した時、すぐに住めるよう掃除をし、生活するために必要な物も準備してくれた。  常に青蝶の体調だって心配してくれた。良き理解者でもあった。  その暁明が一体何をしたと言うのか。 「青蝶が傷つくだろうと思い、言わずにいたのだが……其方は暁明から客を斡旋され、売春行為をしていたね?」 「……っっ!! ……それを……知って……」  やはり飛龍には何もかも見通しだった。『終わった』と瞬時に思い、顔色を失う。否定のしようもない。暁明が追放されたなら、自分もそうされるべきだと泣き崩れた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加