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其の参拾弐
「単刀直入に言うと、暁明はもうこの後宮にはいない」
「いない? いないとは、どう言う……」
「……追放だ」
「追放!?」
青蝶は心の準備をしていたつもりであったが、事実はそれをアッサリと上回った。
暁明は知識ある医務官だ。腕も良い。そんな人が、追放されるほどの悪事を働いていたとは思えない。
あの殿舎を与えてくれたのも暁明であった。
あそこなら、自分がいつでも駆けつけてあげられるからと。針房の長が仕事場から青蝶を追い出した時、すぐに住めるよう掃除をし、生活するために必要な物も準備してくれた。
常に青蝶の体調だって心配してくれた。良き理解者でもあった。
その暁明が一体何をしたと言うのか。
「青蝶が傷つくだろうと思い、言わずにいたのだが……其方は暁明から客を斡旋され、売春行為をしていたね?」
「……っっ!! ……それを……知って……」
やはり飛龍には何もかも見通しだった。『終わった』と瞬時に思い、顔色を失う。否定のしようもない。暁明が追放されたなら、自分もそうされるべきだと泣き崩れた。
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