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「もう、大丈夫だ。私がいる。青蝶はこれから幸せになればいい」
「……して、ください」
「青蝶?」
「ころして……ください……」
「何を言う! そんなこと、するものか!!」
心から信頼していた人に裏切られ、飛龍に売春をしていたことも知られてしまった。
いっそ、何も知らないまま暁明に殺されていた方が幸せだったのかもしれない。それが叶わぬ今、飛龍によってこの人生を終わらせてほしい。
「もう、生きる意味もありません」
「あるではないか。私が、いるではないか。自分のために生きれぬのなら、私のために生きてくれ」
「……うぅ……僕は……穢れています。殿下に愛してもらう価値などありません」
「それを決めるのは私だ。私が生きろと言っているのだ。命令だ。私と共に生きろ、青蝶」
「……殿下……」
こんな自分を愛すると言うのか。知らない男に奉仕してきた穢らわしい自分を知ったにも関わらず。
目頭が熱くなる。
『生きろ』
その言葉は、どんな慰めより深く青蝶の心に刻まれた。
飛龍は瘰を呼びつけ、青蝶を自室へ連れて行くと言い出した。
皇太子の部屋に住むなど、皇妃しか許されない。それでも今すぐ青蝶を飛龍の部屋に住まわせると言うのだ。
「行く末は皇妃として迎える予定だった。それが早まっただけのこと。もう、誰の目にも青蝶を触れさせたくない」
これからは、飛龍と完全に二人きりの生活にすると言った。
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