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其の参拾肆
引き止めたのは瘰だった。
「何故止める、私の意思だ。いくら瘰の意見でも、それは聞き入れられぬ」
「反対はしておりません。ただ、今、移動するのは目立ちすぎます。今夜遅くになさった方が……と思いまして」
「うむ……それは確かにそうだが……」
「それまで、青蝶様も体を休めるべきです」
「……瘰の言う通りだ」
飛龍は最終的に瘰の意見を汲み、今夜二人で移動すると言って青蝶を寝台へと運んだ。
青蝶が構わず仕事に行ってくださいと言うと、午後の仕事は青蝶の付き添いだと言った。
「私にしてほしいことはないか?」
「殿下に、ですか? そんなの何もありません」
「青蝶はもっと我儘になるべきだ。今夜までに何か一つくらい、私にしてほしいことを考えておくように」
「そんなことを、言われましても……」
本当に何もない……とは言えなかった。飛龍の表情は、青蝶を自室へ招くと決めてからどこかスッキリしたような気がする。もしかすると、もっと別のタイミングを考えていたのかもしれないが、この好意には甘えておくべきなのだろう。
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