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「そうくるなら……」
ルビィはブツブツとつぶやきながら、トモの簡易布団の上に、アイブロウで計算式を書いていく。
「待てってっ。そんな強く書いたら穴が開くっ」
「うーん。サービス料で二パーセントが妥当ってとこか。知名度の低いアイドルでニパーセント、その後は物乞いのお願いでしょう?その後は五パーで……」
「おいったらっ」
ともに羽交い絞めされて、ルビィはハッと我に返る。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃないわっ。うわー、俺の布団、ダサいじゃん」
「いや、そんなムキにならなくても。ビニール袋なんだから、始めからダサくない?」
「……そうだね」
トモは、二十二歳という年齢とムキになった内容を重ねて、耳を真っ赤にした。
「それでさ、ギルド内にカワイイアイドルがいれば、ウィンウィンじゃない?」
「はあ?本気だったの?」
トモは目を丸くした。トモのイメージするアイドルは、前の世界で推していた『アニマルパラダイス』という、夏は動物のカチューシャ、冬は着ぐるみを着てステージ上で一生懸命踊る女の子だったから。
そのアイドルグループも、たった一年で三十人から五人にまで減った。元メンバーの暴露で、パワハラだとか彼氏がいる証拠が出てきて、最終的に学業に専念という理由で冬眠したのだ。
なぜ、『解散』ではなく『冬眠』だったのか。
『アニマルパラダイス』は、入会ファンクラブと動画を見るための有料メンバー登録があって、半年経過しなければ退会できなかった。他にも、グッズ販売で高額商品を売りつけたいため、コアなファンを逃がさないためだ。
冷静な人は気付いて去っていったが、トモはコアなファンの部類で、復活するまで会員費を払い続けると決めていた。
「そんなアイドル、どこにいるんだよ。育成だって大変なんだぞ?スター性も必要だし」
鼻息荒くドヤ顔したトモに、ルビィはウインク。
「ここにいるじゃん?」
「は?ルビィができるわけないじゃん。まず、年齢がさあ」
腕組して品定めをするトモに、ルビィは平手打ち。
「チッ」
「はいはい、そんな何度もぶたれませんよって。あー、ダメダメ。アイドルなら、何があっても笑ってないとさ」
そんなトモを、ルビィはジッと見つめた。
「なん、だよ」
「さてはトモ、あなた、アイドルヲタクね?」
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