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「自分を顔をキャンパスにして何にでも変身できる時代でしょうが。髪のイメチェンは時間かかるけど、化粧はすぐだもん。男も女も化け放題だし、気分も変えられてさっ。あっ、ちなみに、ちゃんと見てよ?私の黄金比率は完璧なんだから。パッと見は薄い顔だけど、肌もスベスベで、毛穴レス。若く見えるんだから」
「うーん、確かに」
間近でジロジロ見られても、トモの評価が高くて、ルビィはご満悦。
「ウフフー。このエステも、美容室も、ドレスまで優待よー。この三社はあと五年は保有しようかなー。ワンランク上のホテルも無料でさー。あ、泊まり損ねた。チッ」
舌打ちしたルビィを無視してトモは感心。
「すげえな、株持っていれば贅沢できて、お金いらないじゃん」
「いやいや、甘い。リコリス並みに甘い。無くなってもいい覚悟で運用しているから、気持ちもギスギスしないだけ。さあっ、もう時間もないっ。それで、私の考えなんだけど」
「ああ、そうだな」
ルビイはファンデーション、チーク、マスカラ、ネイル、スキンケア化粧品を地面に並べていく。
「ファンデーションはグルスさん、この、チークとアイシャドウは私たち、残りはギルドメンバーね」
(わかりづらっ)
「それで?」
「うん。ギルドメンバーにはアイドルが必要だなって」
「アイドルぅ?」
「そう、アイドル。いつの世も、商売っていうのは性欲で成り立ってるってもんよ。美、才能、金。全てモテるための手段。それがないなら、売買なんて必要ないんだから。ギルドの縮図って、こうでしょう?」
ルビィはギルドメンバーをひとまとめにして、グルスとルビィ、トモから引き離す。
「あー、大体そうだね。ギルドに入ると身分証明書を発行できるんだけど、そこには居住地が書かれない。この世界で人は居住地の資源だから、別な場所で生活するとなると、それはそれは、面倒な手続きが必要になるんだ。つまり、人手の足りない町や村にとって、Sランクのギルドメンバーは鴨がネギを背負ってきているようなもので、欲しくてたまらないってわけ。ギルドメンバーも、既成事実作られないよう離れて生活するぐらいだから。マスタークラスは別で、貴重な遺伝子は残すべきだって重婚が認められているけどね」
ルビィは口元に人指し指をあてて、下を向いて考えた。
「やっぱりねえ。冒険したいメンバーにとって恋愛は地獄、でも女性にチヤホヤされたいから、飲み屋に団体で押しかけて毎晩どんちゃん騒ぎをするしかないよね」
「そう。グルスさん以外のギルドメンバーは町の近くでテントを張って生活だからねえ。結局、グルスさんが羨ましいんだよ。テントは男だらけで、統制する人もいないから退屈だし」
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